この物語は幼少期の性的被害が原因で女としての自分を見失い、男という性を恨み、援助交際・風俗と自殺未遂を乗り越えた女が子宮頸がんになり【子宮全摘】を控えて自らの女性性と向き合うことになった経験をノンフィクションで記載しています。
話の内容から、精神的に不安定な人や男性にトラウマがある人は閲覧をおすすめしません。
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男性を引き付けやすい女性は存在する。
見た目だけでなく、雰囲気や(おそらく)男性にしかわからない匂いみたいなものがあるのだろう。
痴漢被害やレイプに遭った女性に対して「あなたも悪い」といった意見を投げる人がいるが、私はそんな人にどこに悪い要素があるのか聞いてみたい。
どんな要素がひねり出されても論破する自信はある。
18歳の時、地下鉄で痴漢に遭った。
ラッシュが終わり誰も載っていない車内で痴漢はわざわざ私の隣に座り自慰行為を始めた。
私は走り続ける電車の中、何も見えるはずのない真っ黒な車外のコンクリートを見ていたはずだたったが
実際はその息遣い、声を聴きながら痴漢の表情、手の動き、下半身を反射した窓越しに見ていた。
援助交際をしていても実際の犯罪は恐怖で動けず、声も出せなかった。
やがて痴漢は精液を足元に放出し、車両を後にした。
やっと立ち上がった私が振り返ると、同じクラスの貴子がドアの横で泣いていた。
貴子は痴漢に遭っている私を見て泣き出したようだった。
実際に体験するだけでなく、見てしまうこともトラウマになる。
こんな女子たちのどこに悪い要素があるんだろうか。
ほとんどの女性はこのような被害に遭っても無抵抗で泣き寝入りなのが現実だ。
私は6年生の時、3度目の性的被害に遭った。
それが起こったのは夏の暑い日。
母の会社のバス旅行で訪れた大きなプール付きレジャー施設だった。
相手は母の会社の社長の旦那さん。
40~50歳くらいのおとなしそうなおじさん。
休憩時間にアイスクリームを買ってあげると言ってきたので行っておいでと母たちに言われてついて行った時に被害に遭った。
ノースリーブの膝丈ワンピースを着ていた私に、おじさんはワンピースの中を透視するような目つきでこう言った。
「6年生だと、もうおっぱい膨らんでいるの?」
当時私はすでに生理も始まっていたし、胸も膨らんでいて思春期だった。
学校では性教育の時間というものが1年に1回だけあって、5年生でも受けたし、6年生でも受けたあとだったのでセックスが何か、赤ちゃんができる仕組みみたいな知識はすでにあった。
当時同級生の間では中高生向けの女の子雑誌「エルティーン」が流行していて
エルティーンには
- メイク講座
- 流行ファッション
- 恋愛の悩み相談・彼氏の作り方
- キス・セックスのやりかた
- 読者体験談
- フレンド募集(いわゆる文通)
みたいなのが載っていたんだけど内容は健全になっていって今はもう廃刊。
まじめには育てられたけど周りは小学生でも妊娠する子がいるし、担任の先生の子供を妊娠してPTAで問題になったり環境があまりまじめではなかったし、私自身の心はそれまでの性的被害もあって病んでいたというか。
そのおじさんにアイスクリームを買ってもらったときに施設の裏手のほうに連れて行かれて身体を触られたり、陰毛が生えているかチェックされた。
「おっぱいは膨らんでいるけどブラはまだなの。毛はまだ、生えてないんだね」
そのような言葉がかすかに耳に残っている。
それ以上のことはなかった(というか記憶にない)けど、この時私の中にあった亀裂が大きくなって修復不可能になった。
男という性別を軽蔑した瞬間だった。
その後もとの場所に戻ったおじさんと私。
おじさんが奥さんに言った言葉が今も忘れられない。
「マキちゃん、おっぱい膨らんでいるけど毛はまだみたいだね」
奥さんが返す
「あんたばかじゃないの?まだ小学生よ!」
この奥さんの返事にはどんな意味が込められていたのだろうか?
普通ならおじさんのこの言葉には違和感しかないであろう。
おっぱいを見たとしか思えない、毛が生えているか確認したとしか思えないこのセリフに違和感しか覚えないであろう。
奥さんはおじさんの幼女趣味を知っていたのだろうか。
だとしたらこの女も許さない。
小学校6年生でこんな気持ちが芽生えた。
おじさんに会ったのはその日だけだった。
なのにおおかた30年近く経った今でもおじさんの顔や口調が鮮明に思い出されるほどの記憶をあの男は私の脳ミソに刻んだ。
奥さんの会社はその後倒産し、夫婦は引っ越し、今はどこにいるかはわからないが今もたぶんこの青い空の下で生活しているのだろうと思うと気分が悪くなる。
たとえ性行為がなくても傷つくものは傷つく。
傷ついた心は二度と元の状態には戻らない。
私はそれ以上されなかっただけ運が良かったと思い込むように生きてきたけど何が運が良かっただ、その後の私はどんどんレールを外れ、世間から逃げても自分から逃げられない地獄の中で20年近く生きてきたのだ。
明るい光が差し込むまでどれだけ暗闇を彷徨ったか、あの男にはわかるまい。
あの男に言い訳は許されない。
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