※当サイトではプロモーション広告を利用しています。

【第8話】身体を対価に男の心を弄んだ日々

子宮とワタシ

京介とは長くは続かなかった。

そもそも吊り橋効果で好きだと錯覚しての結婚だったと思っている。

 

京介と結婚したことは後悔はしていないが、マイホームを購入した直後の離婚だったため京介は名義変更を言い残して家を出た。

 

決定打は暴力だった。

 

 

 

京介は真面目でエリートの半面、感情の起伏が激しく納得がいかないと相手が屈服するまで理論的に問いただす人間だった。

京介の手が飛んできたとき過去の記憶がフラッシュバックし、終わりを悟った。

 

 

3,500万円の家を建て、京介が支払った住宅ローンはたったの48万円。

48万円は名義変更の手数料と諸々に消えた。

 

住宅ローンの名義変更は私の収入では申請が下りなかったため、母親の名義を借りて約3,450万円のローンを組んだ日、私は実家を出て歓楽街に足を踏み入れた。

 

 

エンコーは腐るほどしてきたけど、性風俗は初めてなので緊張した。

怖い人が出てきたらどうしよう、無理やり働かされたらどうしよう。

 

そもそも性が絡む接客って何。

 

 

 

 

誰から聞いたでもなくただの噂から想像していた無知な私がドアを叩いたお店はなんと高級サロン。

 

風俗では若い女の子以外に、業界未経験や特技を持っている女の子が売れやすい。

私は年齢的にはまだ若かったし、ジャンルで言えばクール美人系(だと店長に言われた)だから即日採用になった。

 

エンコーは何の保証もなく身の危険が大きいが、風俗は悪質店でない限り給料がもらえるし身は98%くらい安全だ。

何より出勤すれば必ず仕事があるし、自分で男を選ばなくても相手のほうから来てくれる。

 

面倒な交渉もないので稼ぐには手っ取り早そうだと思った。

 

 

初日にサロンではどんなことをするのか教えてもらい、いきなり客をつけられた。

 

透け透けのランジェリーに身を包み、深々とお辞儀をして客を出迎える。

私の(風俗での)初体験は全身墨が入った男だった。

 

 

洋服を脱がせて固まる私に「俺は彫り師だから、安心してね」と声をかけ、本当は私がリードしなければならないのにリードしてくれた。

 

 

風俗では業界未経験は人気があって、争奪戦になりやすい。

俺が教えてやると言わんばかりにこぞって客が予約を入れるので初日から3万、4万など珍しくはない。

 

お店は予約が入ったほうが売り上げが上がるがなにせ業界未経験は仕事の大変さを痛感し辞めやすい。

風俗という仕事はエンコーのように気が向いたら股を開くだけではない、れっきとしたビジネスなのだ。

 

性を売りにするということは想像以上に過酷なのだ。

 

 

だからお店は初日からバカみたいに働かせるようなこともしない。

 

お店にうまい具合にコントロールされながら私は風俗に身を沈めていった。

 

 

 

しかし私は過去のトラウマを完全に受け入れたわけではなかったため、その気持ちを(ローンとともに)どうやって受け入れながら働こうか悩んだが、風俗という場所はその気持ちを昇華させるのに難くなかった。

 

「男性という性は射精をしないと理性的になれない」
「その一瞬のためにお金を払う生き物」
「男は精子が溜まるとペニスに支配される生き物」
「高額なお金を払ってまで女と遊ぶ生き物」

 

 

 

当時は自分にとって都合のいいように「風俗嬢」を解釈し、トラウマを持った自分を自分でだまそうとしていた。

 

 

お客はいろんな人がいた。

 

  • 純粋に風俗が好きな男
  • 嬢を本気で好きになり暴走する男
  • 風俗嬢は身分が最下層の可哀そうな女がする仕事だと決めつける男
  • 風俗嬢はエロいことが大好きだと思い込んでいる男
  • だから風俗嬢には何をしてもいいという男
  • お金を出して遊んでやっているんだから奉仕しろという男

 

 

 

「指名してやったんだからサービスしろよ、どうせスキモノなんだろ」

そう言って膣に指を入れ好き放題責める客の頭の頂(てっぺん)を、喘ぎながら冷めた視線で見つめる。

 

「必死になってるお前のほうがスキモノだろ」

そう考えたら、対等である。

 

※威圧的な態度をとるお客に対しての話であってお互い恋愛ごっこや割り切って遊んでくれるお客にはこのような感情はまずない

 

 

 

世間の風俗嬢に対する視線は冷たい。

お店が検挙されて警察のお世話になれば「こんな仕事辞めなさい」

性病検査で婦人科に行けば「そんな仕事辞めなさい」

 

好きで風俗嬢をやっている女はほんの一握りだ。

 

 

 

大半は借金か生活苦かの風俗嬢に辞めることを強要するなんて死ねと言っているものだ。

 

高給だからやっている。

自ら望んで(望まざるを得ない場合含む)風俗で働いていても、風俗嬢でいることが辛いと感じるときもある。

 

 

私はとにかくお金が必要だったので週6で出勤していたけれど来る日も来る日も知らない男に股を広げることがしんどくなることもあった。

エンコーをしていた時はそんなこと思わなかったのに。

 

それもそうだ。

エンコーは多くても1日2人だったのに、風俗は多いと1日15人くらい相手をする。

 

15回衣服を脱着して、15回同じ行為を繰り返していたら膣が擦り切れて出血もするしそもそも窓がない薄暗い部屋で好きでもない相手がかわるがわるやってきてはエロいことしかしない。

 

まれに行為なしのお客もいたが、1日中そんな過ごしかたをしていたらいい感情なんて芽生えない。

 

 

 

知らない間に私はどんどん病み、消えない過去に感じる苦しみが大きくなりすぎて私は乖離症状を起こし自分を死へと導いた。

 

 

***

 

 

 

風俗は、長く働く場所ではない。

私は風俗で300人ほどの嬢と知り合ったが、8割程度は病んでいた。

 

お金がないから働き始めたのにいつの間にか稼げることが消費につながりまた風俗に働きに来る。

この負のループに陥るとなかなか抜け出せない。

 

 

なぜなら風俗嬢はたった1日で数万円、多いと10万円稼げてしまうからだ。

 

「一度味わったら昼職で働くことがバカらしくなる」
「シンドイけどもう抜け出せないやー」

 

彼女たちは口々にそう言っていた。

 

 

私も当初、30分相手して数千円もらえるなんて、と
それがエンコーの延長線上にあるだなんて嘘みたいと感じていたが知らず知らずの間にのめり込んでいった。

 

 

金銭感覚の麻痺、サービス精神の欠如。

 

風俗はエンコーではないし、エンコーの延長線上でもなかった。

 

私は風俗を甘く見ていた。

 

 

風俗は、れっきとしたビジネスだ。

この時の私はまだそれがわからないでいて、病む結果となった。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました